2008年11月28日金曜日

ノンタイトル~本編5~

2008年11月28日 金曜日


今日の講義は、午後からだった。

2コマの講義を受け、まっすぐ家に帰宅した。

カバンを置き、床に座った。

そして。テーブルの上のリモコンを手にして

テレビの電源を入れた。

ちょうど、インドで起きたテロ事件のニュースが流れた。

物騒な世の中になった。

僕は、こういったたぐいのニュースは嫌いだ。

人を殺すなんて行為は、僕の中では絶対に認められない。

他人の時間を止める事を、許された者などこの世にいないのだ。

だから、僕は裁判の死刑制度にも疑問を感じている。


僕はカバンの中の携帯電話を取り出した。

昨日、彼女からメールが届いたのだ。

今日の講義の間、何度このメールを読み返した事か。


「タイトル 片瀬雪菜です。

 わかりますか?医大生くん。

 図書館で、大あくびしていた雪菜です。

 来週の火曜日、私は図書館に行くけど

 医大生君は来るのかな?

 最近、寒くなってきたから

 風邪には気をつけてね。」


僕は、すぐに返信した。

「タイトル 高橋 裕作です

メール有難う。

図書館で、大あくびを見た裕作です。

毎週火曜日は、図書館に行く事が日課になってるから

もちろん行くよ。

雪菜さんも、風邪には注意して下さい。」


来週の火曜日に、彼女に会える!

僕は今にでも叫びたくなる程に嬉しかった。



そして、今日このメールを読み返す度に

頬が緩んでしまう。

でも、忘れてはいけない事がひとつある。

彼女についた嘘の誤解を解く事だ。

次こそは、きちんと話そうと思っている。

今日は、これから昨日借りてきた恋愛ものの映画を観るつもりだ。

今まで、恋愛ものの映画なんて避けてきた僕だったが

来週も彼女に会うし、もっと女性の事や

恋愛について勉強しないといけないと思ったからだ。

でも、いきなりラブストリー映画を借りようと思っても

何を借りていいか、さっぱりわからなかった。

だから、ここ最近よく名前だけを耳にしていた

「恋空」という映画を借りた。

テレビをビデオ入力に切り替えようとした時に

京都で起きた殺人事件のニュースが流れていた。

犯人が逮捕されたからといっても

次に新しい殺人犯が現れる。

「そんないたちごっこな世の中だから僕のような人間が。」


ふと我に返った時には

恋空のオープニングが流れていた。










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