2008年12月1日月曜日

ノンタイトル~本編8~

2008年12月1日 月曜日


ペルー日本大使公邸人質事件が発生したとの報道を

僕はおばあちゃんと二人で観ていた。

すると、一本の電話が部屋に鳴り響いた。

「お母さんからかなぁ」

おばあちゃんは、重たそうに腰を上げ

受話器をとった。

僕は、テレビに夢中だった。

気がついて、後ろをみると

おばあちゃんは泣き崩れていた。

受話器を抱きかかえながら。


次の瞬間 僕は、ハッと目が覚めた。

夢を見ていたようだ。

「またあの夢か。」

忘れる事はできないのだろうか。

1996年12月17日に起きたあの事件の事を。

あの頃まだ10歳だった僕には、そのつらい現実を受け入れる事ができなかった。

それは、今も変わらない。

もう思い出すのがつらかった。



時刻は、20時を過ぎていた。

バイトが終わって家に帰り

テレビを観ながらいつの間にか

寝ていたようだ。


とうとう明日は、彼女と会う日だ。

しかし、今はそれで胸を高鳴らせる事ができなかった。

夕食はまだだったが、食欲がない。

でも何か食べなければと思い

とりあえずガスコンロに火をつけた

そしてお湯を沸かそうとした。

「今日は、カップ麺か」

僕は、冷蔵庫を開けて

ねぎを取り出し、切り始めた。

気休めの野菜だ。

これで、偏った栄養バランスが少しはましになるだろう。


独りででいる事には、慣れていた。

独りが、楽だと感じる事の方が多かった。

しかし、あの夢を見るたびに、

僕にとてつもない孤独感が押し寄せる。

その波は、数日はひいてくれない。

孤独が怖い。


さっき沸かしていた、やかんのお湯が沸いた。

やかんはピューという音で鳴きながら、かたかた動き始めた。


それは僕の心の悲鳴だったかもしれない。



























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