2008年12月15日月曜日

ノンタイトル~本編20~

2008年12月10日 水曜日 第4幕

その後、病院に運ばれたが

裕作の家族と菜摘の4人はすでに手遅れだった。

最終的に死因は、一酸化炭素中毒だった事が判明した。

しかし、雪乃と真白は奇跡的に意識を取り戻した。

そしてすぐに、雪乃は別の病院へと移された。

娘を殺そうとした、母親を同じ病院においておくのは

まずいと判断されたのであろう。

雪乃は、3ヶ月程で退院したが

退院後は、そのまま警察署へと連行された。

真白は全治1年の重傷だった。

退院後は、静岡にある母親の妹の家に引き取られる事になった。

雪乃は、一家3人と娘を殺した殺人罪と

真白を殺そうとした、殺人未遂罪で無期懲役の判決が下った。

そして、現在も横浜の郊外にある刑務所で服役中である。


僕は怒りと悲しみの入り混じった感情に震えていた。

「許せない。絶対に。」

その言葉は、大きな憎しみが込められていた。

それに僕は知らなかった。

姉の菜摘も殺され、真白も重傷を負った事を。

すると真白は着ていたニットの裾ををめくり上げた。

その脇腹には、大きく縫われた痛々しい傷跡があった。

僕は、目を反らした。

僕の家族はみんなその傷をもったまま、死んでいった。

その怒りは更に増していった。

「2年前、初めて面会にいったの。」

真白が俯きながら言った。

「久しぶりに会ったお母さんは、まるで別人だった。

 すごく痩せちゃってて、あの時の優しいお母さんの面影は

 全く感じられなかった。

 でも、ずっと謝ってた。

 涙を流しながらごめんなさい、ごめんなさいって何度も繰り返してた。

 裕作くんと私に、取り返しのつかない事をしたって。」


「そんな謝罪、おれは絶対に受け入れないし認めない!

 なんで、真白の母親が生きてるのに

 おれの家族は死んだんだ!

 なんで、殺されなきゃならないんだ!」

僕は声を張り上げた。

真白は俯いたきながら言った。

「裕作くん、本当にごめんなさい。本当に。」

「なんで真白が謝るんだよ!

 真白だって被害者だろ!
 
 おまえの母親は、真白まで殺そうとしたんだぞ!

 そんなおまえが、なんで謝るんだ!」

「だって、たった一人の母親なんだもん。」

真白は言った。

その言葉は、僕の胸を突いた。

そう。

彼女にとっては、あんな事件を起こした犯罪者でも

たった一人の母親だ。

僕が、家族を想うように、彼女も家族を想っていた。

これ以上母親の事で真白を責める訳にはいかなかった。

しかし、最後に聞いておきたい事がある。

「じゃあ、何で僕の前に現れた。しかも偽名まで使って。」

俯いていた真白が、僕の目をみた。

その目は、悲しみで溢れていた。


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