2008年12月7日日曜日

ノンタイトル~本編14~

2008年12月7日 日曜日

過去の記憶が、断片的に蘇っている。

しかしそれはばらばらの点に過ぎなかった。

僕はその点を、1本の線で結ぶ事ができないでいた。

雪菜は、図書館で初めて出会う前から

僕の事を知っていたのだろうか。

そんな訳はない。

僕みたいな平凡な男の事を、知っている人間なんて

今まで、僕の辿ってきた道で交わった人だけだ。

しかし、僕には雪菜の顔に見覚えはないはずだ。


昨日の夕食の時もその理由は教えてはくれなかった。

「時が来たら、きちんと話すから

 もうこの話はやめよ。」

そんな事を言われたら

僕には、それ以上問いただす勇気なんてない。


今日の天気は、快晴。

でも、外出する気には全くなれなかった。

先週の金曜日に運んで来た寒気は

昨日、日本海側に雪を降らせた。

本格的に、僕らの街を

冬という季節が包み込み始めた。

今日は、まだ雪菜からの連絡はない。

時が来たら。

時というのは、いつなのか。

なぜ今は、話せないのか。

やっと医大生だという誤解が解けて

気持ちが晴れると思いきや

今度はそれ以上に僕の気持ちを曇らせた。

「一体、彼女は何者なんだろう」

ベッドの上で横になりながら僕はひとりつぶやいていた。

しかし、彼女が何者であろうと雪菜は雪菜だ。

僕の想いも変わるはずはない。

それだけは断言できた。



僕の心の中で、唯一 曇ってないのは

彼女に対する想いだけになっていた。








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