2009年2月9日月曜日

エリーとサラリマーン

おれは、高柳 耕一。

N山商事に勤める、言わばエリートサラリーマン。

おれが言うと、嫌みな感じに聞こえるが

周りがおれの事を、そう呼ぶのだから仕方がない。

おれは、仕事にもオシャレにも抜け目がない。

髪からはシャンプーの匂い。

おれが歩く度に、香水の匂いがほのかに香る。

そしてプレゼンでは重役どもを、釘付けに。

会議では、袖口から見せるエルメスのカフスが

女社員たちの心を奪う。

午前中は、鳴り止まない電話に対応し

午後は、取引会社へ出向き

夜は資料の作成。

そんなおれには、秘書が1人ついている。

川上 恵理子

26歳の派遣社員だが

仕事にも真面目で、

とにかく一生懸命さの伝わる子だ。

そんな彼女だが。恐らくおれに惚れている。

なぜなら、ふと目をやるといつも彼女と目が合う。

そう、彼女はいつもおれの事をみているのだ。

彼女にとっては、おれは高嶺の花なのだろう。

なぜなら私は、エリートサラリーマンなのだから。




私は、川上 恵理子。

N山商事に勤める派遣社員。

主に私の業務は、高柳 耕一という

社員の秘書をやっています。

高柳に付いて、もうすぐ1年。

あいつの仕事のできなさに

毎日、怒りを覚えています。

何の結果も出ない電話を

毎日、長々としており、

あいつへのクレームの電話が

毎日、鳴り止む事はない。

客先に出向いても、何の収穫もないまま

バカ面して、帰ってくる。

そんな、仕事の遅いあいつの

資料作りは結局、夜になってしまう。

残業する事に対しては、文句は言わない。

けど散々、残業してつくった資料は

いつも上司から、ボツをくらって

最終的にまとめるのは、私の仕事。

その資料をつかってのプレゼンでも

モジモジして、本当に気持ち悪い。

そんな不気味なあいつの事を

重役はいつも物珍しそうに見ている。

まーでも、仕事ができないだけならともかく

更にあいつの体臭が本当に臭い。

髪は、整髪料なのか脂でてかってるのか

わからないような感じだし

何よりも体臭が臭い。

それを隠すために使っている香水なのか

そのチョイスも最悪。

それに袖口から見せるカフス。

どこのメーカーなのかわからないけど

Hという文字が、彫られていて

みんな、変態カフスと呼んでいる。

それにあいつは、パソコンの画面をみながら

いつもニヤニヤして気持ち悪い。

怖いもの見たさで、ついつい見てしまうが

それであいつと目が合ってしまう時には、

寒気がするくらい、ぞっとする。

だから同僚の友達は、あいつの事を名前で呼ばない。

いつもみんなはサラリーマンと呼ぶ。

名前すら呼ばれない。

ちょっとかわいそうな気にもなるが

自業自得だと思う。

ちなみに私は、みんなからエリーと呼ばれている。

だから、高柳と一緒に帰社すると

いつもみんな、

「エリーとサラリーマンが、帰ってきた。」

と言う。

そんな私も、もうすぐ27歳。

こんな奴の秘書は、早く卒業しなきゃ。





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