2009年2月17日火曜日

線香花火。

水面に反射した月灯りが、幻想的な色をして輝いていた。

それに見とれていた僕に、彼女は気付いた。

「ねー、きれいでしょ?」

線香花火の光は、小さくも力強かった。

そして、線香花火の穏やかな灯りに照らされた

彼女の横顔は、永遠という言葉を

信じたくなる程に、美しかった。

彼女は、夏のひまわりに負けないぐらいの笑顔で

僕に言った。

「一緒に、花火しようよ!」

僕は頷き、袋から1本の花火を取り出した。

ローソクに灯る炎を、花火の先へと移した。

線香花火よりも、勢いよく輝き始めた。

「すごーい!きれいだね!」

二人は、同じ花火をじっと見ていた。

その時、彼女は一体何を考えていたのだろうか。

今となっては、その答えもこの花火の炎のように

消えてなくなってしまった。

僕は、終わった花火をバケツの中に入れた。

バケツの中の水は、未だ月灯りを揺らしている。

「最後の線香花火は、二人で一緒にやろうよ!」

彼女は、袋から花火を取り出し

一緒に持ってといわんばかりの仕草で、僕を促した。

彼女の持ち手よりも下の位置に、親指と人差し指で花火を摘んだ。

そして、ロウソクから最後の炎をもらった。

「動いちゃだめだからねっ!」

花火を持つ彼女の指はとても細く、その爪は薄くピンクがかっていた。

大きな玉が、出来始め

そこから

パチパチ、パチパチと

火花が散った。

子供の頃にはわからなかった、

線香花火の柔らかな輝き。

そんな儚さが、僕と彼女の未来への不安が生まれてしまう。

こうして、彼女とずっと一緒にいられるのだろうか。

「あー!?

 落ちちゃったー。」

そう、終わりなんていつ来るのかわからないのだ。

気持ちが大きくなればなる程、

すぐに終わりが訪れてしまう。

玉が大きくなればなるほどに、落ちて終わってしまう

線香花火のように。

花火を終えた僕らは、境内に座り空を見上げていた。

彼女は、うちわを仰ぎながら言った。

「もうすぐ、夏も終わりだね。」

僕は、何も言えなかった。


そして1週間後、彼女は遠くに引っ越して行った。

新学期が始り、僕はまるで蝉の抜け殻のように

心に大きな穴をあけて、毎日を過ごしていた。

恋が生まれると、いつも見ていた景色が

まるで別世界に来たかのように色鮮やかに、

そして何もかもが輝いて映る。

しかし、恋が終わればその景色は一気に色褪せ、

セピア色をした孤独な世界に突き落とされてしまうような

僕はまるで心のない人形になった感覚だった。

そして僕は今でも、線香花火を見る度に

あの時の、無邪気な彼女の横顔を思い出す。







笑いとオチがなくて、ごめんなさい。

BY TOFU。









4 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

たまにはオチとかない小説も
風情があっていいじゃん^^
で、オチはどこ??

匿名 さんのコメント...

ネットで注文!
そうすればみんなセレブです。

tomo さんのコメント...

幼馴染マンさん。

本当にいつも素晴らしいコメントを有難う。

ブログ、ちゃんと読んでますかって

毎回、聞きたくなるような

私を引きつけるコメントに感謝します。

tomo さんのコメント...

Y助さん。

いい方法を、教えてくれて有難う。

早速、私もセレブの仲間入りを果たせそうです!

って余計、金使って貧乏になっちゃうじゃんかよーー!