2010年2月18日木曜日

ロックバンド。。。その2

やっと、幕が上がる。

おれはこの時を、どれほど待ち望んだか。

おれたち初のコンサートツアーから3ヶ月。

そう、3ヶ月しか経っていないのだが

今回、いろいろと事情があり

メンバーのイソフラ☆ボンの脱退する運びとなった。

そのさよならコンサートが

一夜限りだが、ここ地元名古屋の

総合体育館で行われる事になった。

しかし、おれにとっては

本当に心待ちにしていたコンサートだった。

別にあいつが嫌いという訳ではない。

しかし、おれたちのバンドの目指す色と

あいつの色は、全く合わなかったからだ。

あいつの脱退コンサートだから

おれの好きなようにさせて欲しいという申し出に

おれたちは快く承諾した。

しかし、なんだ。

「イソフラ☆ボン さよならコンサート

 〜大豆のパワーは半端ねぇツアー 2010〜」

バンドよりも前に、あいつが前に出過ぎているだろ。

しかも一夜限りだからツアーでも何でもない。

しかもおれたちはクールなロックバンドなのに

アイドルのコンサートみたいなネーミングになっている。

そう!

そういう所が、バンドの目指す方向性と合わないのだ。



そして、幕が上がった!


おれは、目の前のファンのために

力いっぱい歌った。

イソフラ☆ボンも、すごく活き活きと

ドラムを叩いていた。

2時間が過ぎ、最後の曲を熱唱した。

そして幕が下りた。

舞台から降りたおれたちは

互いを讃え、楽屋に戻ろうとした。

しかし、会場から

イソフラ☆ボン コールが始まった。

「行くっきゃないっしょ!」

切り出したのは、イソフラ☆ボンだった。

そういう言い方が、地味にむかついた。

おれたち3人は、互いの目を見ると

静かに頷いた。

そして、舞台に上がり幕が上がった。

黄色い声援まじりの歓声いっせいにこだまし

会場のボルテージもイソフラ☆ボンのボルテージも

一気に急上昇した。

そうしてあいつはマイクを手にとった。

「みんなー!盛り上がってるかー!」

すると大きな歓声が返ってきた。

イソフラ☆ボンは目頭をおさえていた。

感極まったのだろう。

会場からは、頑張ってという声が

イソフラ☆ボンにかけられている。

そしてイソフラ☆ボンは言った。

「おれ、マジで頑張るよ!

 こんなにも応援してくれるみんながいるんだもん!

 おれ、辞めません!

 これからもメンバーのひとりとして

 このバンドをひっぱってくよ!」

すると会場からは大きな歓声と拍手が鳴り響いた。

おれたち3人は、唖然としていた。

何を言っているのか、今のこの状況が全く把握する事ができなかった。

むしろ、把握したくなかった。

そんなおれに

「なあ、もう1回頑張ってみようぜ!

 もう逃げるなよ!」

とあいつは、声をかけてきた。

なんか、悪いのがおれたち3人みたいな感じになっている。

つい、3人は

「あぁ。」

と言ってしまった。














何なんだ。

あいつは一体。


そして最後の曲の演奏が始まった。

おれは頭が真っ白になっていて

感覚だけで歌っていた。


そして曲は最後の大サビに入ろうとしていた。

ここでは、おれとギターのジョージの掛け合いが

一番の聴かせ所だ。


わかっていたんだ (最初から)

おまえが離れていく事を (ロンリーナイト)

だけどおれは 気付かないフリしていたね (アイム ソーリー)


しかし、掛け合いの部分をいつの間にか歌っていたのは

イソフラ☆ボンだった。

あいつはジョージのパートを勝手に奪っていた。

(最初から)

(ロンリーナイト)

(アイム ソーリー)

しかもその勝手な間に

「なごやー!」

やら

「オーイエス!」


やら、極めつけは

「シロノワール!」

と叫んでいた。









どこでおれは道を間違えたのだろう。

脱退コンサートが、

あいつ主役のワンマンライブになっていた。

もう一度、終わったら考え直そう。

次の作戦を。

あいつ抜きで。











0 件のコメント: