2009年11月16日月曜日

僕の大切なもの 第2話

「美月ちゃん!

 外泊許可が出たわよっ!!」

扉が開いたと同時にカーテンの向こう側から

横山さんの大きな声が聞こえてきた。

「やったーー!」

思わず飛び上がってしまった。

僕にとって、それぐらいに嬉しい事だったからだ。

カーテンが開くと、横山さんの満面の笑顔が見えた。

「ほんと良かったね!美月ちゃん!」

横山さんは、お姉ちゃんの頭を撫でながら言った。

「うん!」

お姉ちゃんからは、それ以上の言葉がでなかった。

言葉のかわりに、たくさんの涙がこぼれでた。

「ほんと、良かったわねー。

 長山先生に感謝しないとねっ!」

お母さんの瞳にも、今にも涙があふれ

瞬きした瞬間、そのたまった涙が筋となって流れ出た。

「あっ、すぐにお父さんに連絡してこなくちゃ!」

そう言うと、お母さんは急ぎ足で病室から出て行った。

それからすぐ、担当医の長山先生がやってきた。

「先生、本当にありがとう!

 すごいすごい、嬉しい。」

お姉ちゃんの目は、真っ赤になっていた。

「美月ちゃんはずっと、頑張ってきたもんな!

 だから、ちょっと早いけど先生からのクリスマスプレゼントだよ。」

お姉ちゃんは、先生の目を見ながら

何度も何度も頷いた。

その喜びをかみしめるように。

「じゃー、先生はサンタさんだ!」

僕は先生の白衣をひっぱりながら言った。

「先生はサンタさんなんかじゃないよー。

 ほら、真っ白い髭が生えてないだろ?」

先生は、僕の視線の所まで顔をもってきて

自分の顎を指さした。

そんな話で盛り上がっていると

電話をしに行っていたお母さんが戻ってきた。

「先生、本当にありがとうございます。

 美月もこんなに喜んで。」

お母さんは、何度も何度もお辞儀をしながら言った。

「なんせ、1年ぶりの帰宅だから

 久し振りの家族団らんを楽しんで下さい。

 でも美月ちゃん、無理しちゃだめだぞ。」

そう言うと先生は少しいたずらな目をしながら、

お姉ちゃんの方を見た。

そして先生は、

お母さんに何やら、言葉をかけ

一緒に病室から出ていった。

「お姉ちゃん!

 帰ったら、久し振りに一緒にキャッチボールがしたい!」

するとお姉ちゃんは、

「だーめ。まだ外で元気に動けないんだから。

 そのかわりに、裕太郎の家庭教師やってあげよっか?久し振りだけど?」

と少しいじわるな目で、僕に言った。

「やだー、やーっだ!!」




気付けば、もうすぐクリスマスだった。

今年も僕は、サンタさんにお願いをしていた。

お姉ちゃんを、元気にして下さい。

昔のように、家族4人が楽しく笑っていた頃を

返して下さい。

今の僕の一番の願いは、ただのそれだけで

それが僕の全てだった。





 


4 件のコメント:

Y助 さんのコメント...

久しぶりの更新やね。

tomo さんのコメント...

すごい!

もしかして、ずっと書いてない間も

マメにチェックしてくれてた!?

すごい感謝です。。。。

頑張るねっ!

Y助 さんのコメント...

ほぼ毎日。

tomo さんのコメント...

ありゃ!?

それは、ごめん。。。